MEMODAS®

MEMODAS®の活用事例

MEMODAS®を人、組織、ビジネスなどの一般的な問題や、商品・サービスの企画、技術開発、生産、販売、流通、知的財産といったさまざまな分野の問題を解決するために、それぞれの個別な問題解決に最適なフォーマットを使用した事例を紹介します。


「新しい発明提案書の作成」入門

1.発明現場の現状

 

(1)これからの研究者像、技術者像
先進的な欧米の技術に追いつけ追い越せという時代はもう昔のことです。日本が自力で革新的な研究・開発を進めて行くには、これからの時代に何が求められるかを予測し、自らが研究・開発のテーマを探すといった高い問題意識を持った研究者、技術者が望まれます。

(2)研究・開発成果の確認
これからの時代は、好きだから研究・開発に取り組む。その結果としての研究・開発成果(発明)を知的財産として活用する。そのために、十分にその発明に見直しをかけて強力な特許を取得する、といった思考が当たり前になります。

(3)発明の支援者としてのリエゾンマン
好きで発明をしている発明者には、協力者が多いものです。
たとえば、知的財産部門の担当者(以下、リエゾンマンという。)は、問題意識の豊富な発明者のよきパートナーといった存在です。
また、元気な研究者、技術者がいる会社は、間違いなく発展しています。研究者、技術者が元気になれるかどうかは、パートナーであるリエゾンマンのサポート力にかかっています。

(4)発明生産計画の立案、実行
生まれた発明をしっかりとした発明に育て上げて、強い特許を取るといったことは従来からも行われてきましたが、これからは、さらに、「どうしたら強い特許につながる発明を生み出せるか?」といった開発活動の上流工程にリエゾンマンがかかわることが求められます。
これからのリエゾンマンは、着眼点を発明の権利化から特許の源泉である発明それ自身へシフトし、意欲的な発明者と共同して「発明生産計画」を立案し、それを達成するといった創造活動の支援者としての立場が重要になります。


2.これからの発明の現場

(1)研究・開発成果の評価のための準備
研究者、技術者は自分の担当する技術分野の体系を把握していなければ、研究・開発成果が新規なものかどうかを知ることはできないはずです。
ところが、実際には、目の前の研究・開発テーマを実現することに夢中になるあまり、そのテーマ自体が陳腐化したものであるということが、その研究・開発成果を報告する際にわかったりします。
研究・開発テーマは、技術分野の全体の体系と流れを把握していることを前提として、決定されるものでなければなりません。
そのためには、研究・開発に取りかかる前に、対象となる技術分野の過去の特許情報を調査・分析し、その結果を整理した「パテントマップ」を作成することが必要となります。つまり、対象となる技術分野の体系と流れが目で見てわかるようにしておくことが必要です。さらに、パテントマップはできあがった時点で過去のものとなりますので、完成直後から日々発行される特許情報を継続的に調査・分析し、パテントマップにデータを補充していくことが不可欠となります。

(2)パテントマップの活用
パテントマップは、元の情報は同じであっても切り口を変えるとまるで違ったものとなります。ということは、自分だけの切り口(技術キーワード)で特許情報を分析して自分に必要な情報を入手できる体制を整えておくことが大切となります。このような、自分に必要な情報だけを的確に入手できるか否かが、研究・開発の成果を決めるものといえます。
そして、研究・開発成果が得られた後は、パテントマップに表されている情報に基づいて、研究・開発成果の本質を正しく捉えてその成果の十分な展開を図ることで、他社に対する参入障壁を築いていくことができます。


3.発明能力とは

(1)発明能力=問題発見能力+問題解決能力+発明把握・展開能力
今までは、発明者としての能力の評価基準として、「問題発見能力」と「問題解決能力」との2つが重要であるといわれてきました。
問題意識のある人は、「問題発見能力」が高いと考えていいでしょう。また、問題を課題と考えれば、その課題を実現するための手段を考え出す力が「問題解決能力」に対応しますので、確かに技術的課題を実現する能力を有する人は発明能力が高いといえるでしょう。
しかし、豊富な「問題解決能力」を有するからといって、必ずしも「自分の開発した成果は何か」ということについて、はっきりと答えられることにはなりません。
これからは、自分が完成した発明の本質を把握し、広い適用範囲を主張できる「発明把握・展開能力」を身に付けなければなりません。
これからは、「発明能力=問題発見能力+問題解決能力+発明把握・展開能力」であると考えるべきです。

(2)研究・開発成果の乏しい発明提案書
自分の研究・開発成果を的確に答えられる発明者はきわめて少ないようです。
発明者から提出される「発明提案書」の記載を見れば、研究者、技術者がなした研究・開発成果の程度がわかります。
残念ながら、具体的な研究・開発した技術を一つ記載しただけの「発明提案書」がなんと多いことか。
私の発明は、たったこれだけですという報告書を提出して満足しているのは、あまりにも残念です。

(3)提案上の問題
これは、そのような「発明提案書」を受け取る側にも問題があります。
発明者から提案された小さな発明を知的財産部門で大きな発明に変換することなどできるはずがありません。できるというのは、担当者の思い上がりです。
研究・開発した技術を1つ記載しただけでよしとした「発明提案書」から研究・開発部門の開発成果の本質を知的財産部門で把握することには無理があります。
元データは、あくまでも発明者の創作した発明ですので、発明者との打ち合わせに十分な時間を費やすことなく、発明者不在の状態では、他社の参入を許さない有効な発明に育てることもできません。
そこで、発明者自身が自分の発明の本質を把握し、かつ、その発明の適用範囲が広いことを説明できる、「発明把握・展開能力」が、これからの発明者の能力の評価基準に加えられることになるでしょう。


4.発明生産計画を推進する

(1)発明把握・展開能力を養う
特許係争事件を見れば、「発明把握・展開能力」の有無が有効で強力な特許を獲得するために重要であることがわかるでしょう。
特許係争に勝つか負けるかは、この「発明把握・展開能力」の有無で決まるといっても過言ではありません。
発明能力に対するこのような意識改革を、発明を生み出す研究・開発部門と生み出された発明の権利化や活用を担う知的財産部門との両者で行われなければなりません。
そのためには、「発明提案書」の書式が、開発した具体的な技術の他に、その代案、変形例、応用例等の記載を必須の条件とするのものでなければなりません。

(2)「発明生産計画書」と「新しい発明提案書」の作成
「自分の開発した成果はこんなにすごいのです。」という「発明提案書」が提出されるようならばしめたものです。そのような状況になるように、知的財産部門としては、今以上に研究・開発部門への支援と研究・開発部門との連携を進めなければなりません。
つまり、リエゾンマンと研究者、技術者とが一緒になって「発明生産計画」という旗印を掲げてみてはどうでしょう。
そのためには、リエゾンマンと発明者とが共同して、発明者が発明する技術分野の全体の体系と流れを把握できる「パテントマップ」を作成し、その「パテントマップ」に基づいて、技術の進化からいって重要となると思われる分野を特定し、その分野で未だ特許出願されていないテーマについて、いつまでにどのような発明をどの位完成させるかといった「発明生産計画」を作成します。
その後、完成した「発明生産計画」に従って、積極的な発明活動を推進実行することが可能となります。


5.発明提案書とは

(1)発明提案書とは発明者の書く特許企画書である
企画書は経営企画部門の担当者だけが書くものではありません。
現在では提案営業という言葉があるように、顧客の要望を待たずに、顧客が望む製品・サービスの企画を製品・サービスの供給側から提案することが行われています。
これに対して、研究者、技術者の場合には、一部の管理者が研究・開発予算を立てる際に、その根拠として研究・開発テーマに関する企画書を作成するくらいでしょう。
すべての研究者、技術者が自己主張し自己実現を図ろうとすれば、特許企画書である「発明提案書」を書くべきです。
企画書は定まった書式に従ったのでは、企画の発想も固定化されてしまうという意見もありますが、特許企画書に当たる「発明提案書」に求められる創造性は発明自体の問題であって、その書式としては発明自体の創造性が的確に表現できるものが求められます。そのために、必ず書かなければならない項目というものもあります。
「発明提案書」は技術に関する企画書ですから、技術的な目的とその目的を実現できる技術的な手段が書かれていなければなりません。そこには、問題を見つける「問題発見能力」と、その問題をどのように捉えるかの「問題設定能力」と、その問題をどのように解決するかの「問題解決能力」が発揮されなければなりません。
問題は問題意識がなければ生まれませんし、いわゆる企画コンセプトに相当する観点が定まらなければ問題の範囲も決まりません。問題をどう捉えるかこそが発明者の自己主張であり、存在価値を示す重要なポイントです。
後は、「発明把握・展開能力」により、自分の考えを解決手段の提案というかたちで説明すれば特許企画書としての「発明提案書」が完成します 。


6.発明提案書の性質

(1)アイデア提案書と発明提案書との違い
企業では、QCサークル等で製造部門や事務部門における現場作業や事務作業の改善提案を一般に「アイデア提案書」(または、改善提案書という。)という名前の書類で受け付けています。
「アイデア提案書」の場合には、現在の製品不良や時間がかかっている事務処理等の原因を追及して改善すべき問題を設定し、その問題を解決するためのアイデアを提案するとともにそのアイデアに基づいた改善活動の成果が記載されます。
「アイデア提案書」は、その改善案が新しいかどうかよりもその効果の大小でその良否が判断されます。その比較対象はあくまでも自社の従来のやり方であり、個別的なものでもかまいません。
これに対して、「発明提案書」では、今までにない技術を提案することであって、その比較対象は業界に存在するすべての技術ということになりますので、技術戦略の観点から体系的に取り組むことが大切になります。
また、今までにない技術であるため、その実現可能性を確認する意味で試作品による評価が必要となる場合があります。これは、アイデアを有効化する過程を経て発明が完成するという考え方によります。
「発明提案書」は研究者、技術者の開発の成果報告書としての意味と、そこから生まれる特許出願や特許権を経営に積極的に活かすといった戦略テーマとしての意味があります。
つまり、「発明提案書」の良否が、企業の技術開発力を表しているといっても過言ではありません。

(2)発明提案書は発明を特許にするために書く
「発明提案書は特許企画書である」という言葉には、生まれた発明をいかに特許権に結びつけるかを企画するという意味が込められています。
特許される発明は、今までにない発明であるというだけではなく、今までにある発明から当業者(その技術分野の専門家)が容易に考えることができないということが確認されなければなりません。
つまり、今までの技術常識ではすぐにたどり着くことができない異質な技術的概念を、技術常識を有する人にわかる馴質な技術的概念として論理的に表現しなければならないということです。


7.発明提案書の構成

(1)馴質異化と異質馴化
まず、今までの技術常識では容易に考えられない発明であることを説明するには、一見従来の技術と同じに見える発明が従来の技術とはどのように異なるかを説明します(このような思考はゴードンの「シネクティクス」という創造技法でいう「馴質異化」に該当します)。
次に、自分が従来の技術とは異質であるとして説明した発明である新しい技術的概念を、当業者にわかるように、目的に対する手段とその効果について因果関係を追って説明することとなります(このような思考はゴードンの「シネクティクス」という創造技法でいう「異質馴化」に該当します)。

(2)特許明細書と発明提案書
「特許は明細書に始まり明細書に終わる。」いわれるように、発明の権利化に必要となる特許明細書は特許の世界では最も重要な書類です。
創造という観点で特許を見てみると、特許明細書は、発明という名の創造行為の結果をまとめた発明の説明書と考えることができます。
発明の説明書ということであれば、発明した者が一番その発明の内容を知っているわけですから、発明者こそが特許明細書の原案である「発明提案書」をまとめる適任者といえます。この「発明提案書」から実際に特許庁に提出する「特許明細書」を作成する場合には、法律の専門家である知的財産部門の担当者や外部の弁理士さんにお願いすることになります。


8.従来の発明提案書

(1)従来の発明提案書の問題点
ほとんどの会社の「発明提案書」は、特許の専門家であるその会社の知的財産部門の担当者が作成したものと思われます。その「発明提案書」のスタイルは、特許出願を意識したものであって、特許法の施行規則で定められた特許明細書の様式に合わせたものであろうことが想像できます。
ここにいくつかの問題があります。
まず、そのような「発明提案書」で使用されている説明文には、法律用語や特許業界の慣用語(いわゆる特許用語)が使われていることでしょうから、技術の専門家である発明者にはわかりにくい、取っ付きにくいものとなっています。
結果として、何を書いたらよいのかがわからず、様式だけを「発明提案書」の参考例をまねて記載することになり、発明の説明が十分になされていないものが提出されることになってしまいます。
特許明細書の様式に合わせた「発明提案書」では、特許法施行規則第24条様式第29で規定されている記載方法である、【技術分野】→【背景技術】→【発明が解決しようとする課題】→【課題を解決するための手段】→【発明の効果】→【発明を実施するための最良の形態】→(【実施例】)→【産業上の利用可能性】→【図面の簡単な説明】→【符号の説明】という項目と順序を採用しています。つまり、特許明細書の様式に合わせた「発明提案書」では、「発明の目的」→「発明の構成」→「発明の効果」の順序に説明することを求めています。

(2)発明の完成過程はいろいろである
また、特許法施行規則第24条様式第29の記載様式があるため、「技術開発の過程をそっくり文章にしたら明細書ができ上がる。」(「特許明細書なんかこわくない!!」、山田康生著、(社)発明協会発行)といわれたりすることがありますが、すべての発明がこの順序にそって完成するものではありません。
たとえば、解決した結果が当初の期待した効果と異なってしまうことがあります。このような場合には、その解決手段と解決結果を他の目的に適用することで新たな発明が完成することがあります。
この場合には、「発明の構成」→「発明の効果」→「発明の目的」の順序に説明する方が自然です。
また、優れた効果を有する手段が確認できている場合にその効果を有効に発揮できる新たな用途を見つけ出して、その用途に最適な解決手段を考え出すことで発明が完成することがあります。
この場合には、「発明の効果」→「発明の目的」→「発明の構成」の順序に説明する方が自然です。したがって、すべての発明を特許法が要求している特許明細書の様式に従って説明させることには、無理があります。


9.新しい発明提案書とは

(1)新しい発明提案書の提案
以上のように、発明は、それぞれの発明が完成する過程が異なるため、特定の1つの順序では、説明し難いことがあります。
「発明提案書」は、特許明細書の記載様式の順序に書くことに意味があるのではなく、特許明細書を書くための発明に関する情報を正確にかつ十分に記載することにこそ意味があるといえます。
そのためには、発明者が発明の内容を説明するのに抵抗のない様式の方が望ましいことになります。本書で紹介する新しい発明提案書は、どこから書いてもかまいません。そのために、記載した内容を後で移動できるように、必要な記載事項毎にその内容を1枚のメモカードに記載するといった「カード式の発明提案書」を作成することにしています。
詳細は後述しますが、新しい発明提案書では、発明情報として記載すべき「発明の目的」、「発明の構成」、「発明の作用」、「発明の効果」の四要素と、これらの下位概念に相当する「従来技術とその問題点」、「具体例、変形例、応用例の構成」、「具体例、変形例、応用例の作用」、「具体例、変形例、応用例の効果」が記載され、それらの対応関係(整合性)が明確であればよいとしていますので、記載順は問題にしません。

(参考)
このような記載順を問題にしない非直線的な思考をするにあたって、その思考の状態が目で見てわかるように表現できるマトリックスカードを使用した方法をMC法(マトリックスカード法)と呼び、この思考方法をパソコン上で実現できるソフト(これを「MEMODAS®」という。)が日本アイアール株式会社(http://www.nihon-ir.jp/)から販売されています。

10.発明提案書の記載項目

(1)発明の価値に関する情報を記載する
発明の価値とは、最終的には市場における価値をもって評価されるべきものと考えますが、その市場的価値はその発明の技術的価値と特許的価値が基礎となって生じるものといえます。
そこで、リエゾンマンは、「発明提案書」の内容を検討することで提案された発明の評価をして、特許出願の要否につき会社に進言することが求められています。
そのためには、「発明提案書」には、発明の技術的価値と特許的価値を評価するための発明の技術的な位置づけと特許的な位置づけに必要な情報が記載されていなければならないことになります。

(2)従来の技術は必ず記載する
「新しい発明提案書」では、特許法施行規則と同様に、従来の技術の説明を必ずしなければならないこととしています。それも提案された発明に最も近い従来の技術との比較において、新たに何が加えられたことで該当する技術分野におけるどのような位置づけがなされるかを明確にすることを要求します。
この技術的な位置づけがなされていれば、その発明が特許された場合に、結果的に基本特許にまでさかのぼってその特許発明が技術の流れの中で占める位置(特許的な位置づけ)がわかるようになります。
発明者自ら、自分がなした発明の位置づけができることが理想ですが、それが無理な場合には、必要に応じて該当する技術分野の従来の技術をリエゾンマンが提供することにより、それを支援すべきです。


11.発明とは

(1)生まれた発明について記載する
「発明提案書」は具体的に生まれた発明を説明するための書類ですので、それを作成するには、まず、発明そのものについて知る必要があります。
発明とは何か?
特許法第2条の発明の定義を見ると「発明とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。」とありますが、これでは何を説明すればいいのか見当がつきません。
そこで、まず、このうちの「技術的思想」について考えてみます。技術というためには、個人的な性格である技能と異なり客観的なものであり、人間が「目的」を持って自然法則にかなった「手段」を適用することでなければならない、と考えることができます。
技術は、「目的」と、この「目的」を達成するための「手段」とが組み合わせられたものであり、1つの技術は他の技術の「目的」にとって「手段」となるという性質があります。そのため、いわゆる技術の相互関連性(階層性)が生まれることになります。
つまり、技術は、相互関連性を備えることで、その時代その時代で、ある技術体系(技術水準)が形成されていることになります。

(2)発明は産業を発達させる
発明とは技術に至る前段階のものであり、発明が技術になるためには開発という段階を経なければなりません。特許法でいう「技術的思想」とは、物質化され、実践され得るものとしての「技術的概念」のことであり、技術として社会的に存在でき何らかの価値をもたらすものでなくては、特許制度の目的である産業の発展は果たせないことになってしまいます。
その意味で、発明は人間の目的を満足する手段として実践的なものであって、効果があるものでなくてはならず、この「効果」こそが発明の価値を決めるものであるといえます。
ということは、技術的思想である発明は、「目的」と「手段」によってなされる人間にとって有用な「効果」からなる総合的なものといえます。これが、いわゆる発明の三要素といわれるものです。


12.発明の三要素と四要素

(1)発明の三要素
平成6年の特許法改正で、特許法第36条第4項にあった「発明の目的、構成、および効果を記載しなければならない。」という文言が削除され、記載要件が緩和された形になりましたが、これで発明の本質が変わったわけではありません。第三者に発明の利用の機会を与えるために、発明の内容を当業者(発明の技術分野の専門家)に理解できるように記載することは、必須条件であることには変わりありません。
依然として、発明の説明書としての特許明細書には、発明の三要素である目的、構成、効果が記載することになります。
これら発明の三要素については、「発明の目的」→「発明の構成」→「発明の効果」は、「解決課題」→「解決手段」→「実施可能性の裏付け」のことであり、「問題情報」→「技術情報」→「実証情報」という見方もできます(「発明の情報的把握」、大門博著、特許管理31巻4号)。

(2)発明の四要素
「発明の目的」→「発明の構成」→「発明の効果」と見ていくときに、1つ抜けている項目に気づくことがあります。それは、発明の作用(発明の機能)です。
この発明の作用(発明の機能)を先の要素に組み入れた場合には、「発明の目的」→「発明の構成」→「発明の作用」→「発明の効果」という構図が成り立ちます。
つまり、「発明の作用」とは、「発明の構成」がどのような作用をしたために、「発明の効果」を生じることになったかの裏付けの役目を果たすものです。
別の言葉でいえば、その発明の本質的要素である「解決原理」に通じるものです。
したがって、発明を説明するには、その発明がどのような目的でなされ、その目的を達成するためにどのような手段を採用し、その手段がどのように働き、その結果としてどのような効果が得られたのか、を記載することになります。
「発明の目的」、「発明の構成」、「発明の作用」、「発明の効果」、つまり、「解決課題」、「解決手段」、「解決原理」、「解決結果」で、発明の必須要素のすべてが表わされます。


13.特許明細書の様式

(1)発明の説明と明細書の様式
発明の四要素は、特許明細書の「発明の詳細な説明」に記載しますが、その名のとおり、発明の説明をする部分です。
つまり、この「発明の詳細な説明」には、発明についての技術情報が記載されています。
発明の四要素のうち「発明の構成」については、発明を客観的に特定するものとして、「解決手段」を特許明細書の【特許請求の範囲】という書類にも記載することになります。
そして、【特許請求の範囲】という書類に記載した「発明の構成」=「解決手段」こそが、特許権になった場合の排他権を決定する技術的範囲を示します。権利を請求する部分です。この意味で、【特許請求の範囲】は権利情報が記載されている部分ということになります。

(2)発明を説明する前に
特許明細書が発明の説明書であるとすれば、発明自体が完成していなければ特許明細書は勿論、その前段階である「発明提案書」も書けるわけがありません。しかし、以外にも発明が完成していない状態で「発明提案書」を書き始めていることが多いようです。
「発明提案書」を作成するには、まず、発明が完成しているどうか、発明が把握できているかどうかが、重要な問題です。
このいずれも、マトリックスカード(MC)を使った「開発成果展開マップ」を作成する中で、発明を完成するために何が足りないのか、発明の本質を把握するためにどんなポイントを押さえればよいかが、はっきりしてくることになります。そのままでは、確かに特許明細書は書けないはずの発明も、「開発成果展開マップ」を完成させることにより、発明を完成し、発明の本質を把握することができ、次第に「発明の目的」、「発明の構成」、「発明の作用」、「発明の効果」が明確になります。
そして、結果としてポイントを押さえた広くて強い「発明提案書」を完成することができるようになります。


14.発明の把握

(1)発明の把握の方法
発明の把握の仕方で、発明の説明書である「発明提案書」の内容が変わることになります。
  発明の把握に当り最初に必要なことは、従来技術を決定しなければなりません。
従来技術と発明とを比較することで発明の説明に説得力が生まれます。それも発明に最も近い従来技術を持ってきて、その従来技術との違いを説明します。
次に、その違いによって生じる、従来技術にはない発明のポイントは何かを説明します。「従来技術では解決されなかった課題は何か。」「その課題をどのような手段で解決したのか。」
「その解決原理(作用)は何か。」「その結果、どのような効果が得られたか。」
発明の説明書には、解決手段を記載することになりますが、その解決手段は権利を請求する部分にも記載する内容でもあります。
したがって、発明の把握とは、特許明細書の「発明の詳細な説明」だけでなく権利を請求する【特許請求の範囲】の書類も同時に作成することと考えていただければ結構です。
その意味では、「解決手段」を記載するには、その発明に必要な最小限の「解決原理」が何かを吟味した上で、その構成要件を組み合わせなければなりません。


15.広くて強い権利

(1)強い権利を取得するために
出願前から存在していたが、出願時に行なった調査では発見されなかった類似技術との差別化(発明が進歩性を有すること)がなされていないといけません。そうでないと、その調査漏れの類似技術を根拠に拒絶または無効にされてしまいます。
これは、これは出願後に発見された出願前から存在する類似技術に対する戦略です。

(2)発明の多面的把握
強い権利を取得するためには、発明を多面的に把握して、あらゆる類似技術を想定することが必要になります。
とはいうものの、それらの類似技術は客観的に確認できないからこそ、想定することになるので、柔軟な発想が要求されることになります。
マトリックスカード(MC)を使って「開発成果展開マップ」を作成する場合には、この多面的展開の手順が組み込まれていますので、その手順に従えば誰でも発明を多面的に把握することができます。その結果、それぞれ「解決原理」の異なる別発明を、それらの上位概念の1つとして捉え、【発明を実施する最良の形態】や【実施例】に複数の実施の形態として記載することで、発明の説明書を組立てることもできます。そして、この別発明を【特許請求の範囲】の書類の各請求項として記載すれば、権利を請求する部分も完成できます。


16.発明の多面的把握

(1)発明を多面的に捉えるための手順
発明を多面的に捉えるといっても、具体的な方法がわかりにくいと思いますので、次にその手順を示します。
①まず、開発技術(開発品)と従来技術(従来品)との構成(構造)上の相違点を列挙します。② 次に、そもそもそれらの構成の相違は、何のために必要になったのか?解決すべき問題点(従来技術の問題点)は何だったのか?を考えながら、それらの構成の相違に基づく開発技術の新しい効果をはっきりさせます。③その上で、それらの新しい効果は開発技術のどの構成から生じるものであるかを列挙します。④新しい効果は、どのような機能に由来するのかを列挙します。⑤各機能について、その機能を有する他の構成を考えて列挙します。⑥複数の構成から考えられる複合的な目的と効果を列挙します。⑦それらの複合目的を解決する構成についても列挙します。以上の手順をたどることで、具体的な構成を案出でき、しかも材料、部品、性能、機能、使用方法、応用装置、他の用途等多面的なアイデアを出すように強制されます。「開発成果展開マップ」では、第1階層目のメモカードにこの思考手順が組み込まれています。

17.一覧できる発明提案書

(1)一目でわかる発明提案書
特許明細書の主要なものは、【特許請求の範囲】という書類と【明細書】という書類の「発明の詳細な説明」との2つです。したがって、「発明提案書」を書くことは、【特許請求の範囲】という権利請求書と、【明細書】の「発明の詳細な説明」という発明説明書とを書くことと置き換えることができます。
「発明提案書」は、発明の本質的要素を漏れなく記載し、特許明細書の記載項目に対応する内容を漏れなく記載したものであることが必要になります。
さらに、発明者とリエゾンマンや弁理士とのコミュニケーションを重視し、そのツールとして新しい「発明提案書」を使う場合には、一目でわかるように一覧表示されていることが必要になります。そこで、これらの条件を満足する新しい「発明提案書」を、発明者が気軽に作成できるように考えてみました。ここでは、マトリックスカード(MC)を使用して「開発成果展開マップ」を作成すれば、最終的に一覧表示された「発明提案書」が完成できるという方法を紹介します。

(2)空間配置型の「開発成果展開マップ」
研究・開発の成果として発明が生まれるものと考えれば、「開発成果」=「発明」という関係が成り立ちます。そこで、開発成果を発明者が「開発成果展開マップ」にまとめることで、「発明提案書」が完成するという構図を作ってみました。
  発明を説明する以上、発明とは何か、発明の本質は何かということを意識することから始まります。技術の創造という観点でいうと、発明の本質は発明の機能であり「発明の作用」ということになります。特許明細書の記載項目としては、重要視されていない「発明の作用」こそが、その発明の価値を決める発明の本質なのです。それは、その発明の「解決原理」は何かということです。原則として、「解決原理」が異なれば別発明です。「解決原理」が他の発明の要素とどのような関係にあるかを確認すると、以下のとおりです。
「発明の目的」(「解決課題」)→「発明の構成」(「解決手段」)→「発明の作用」(「解決原理」)→「発明の効果」(「解決結果」)

「発明提案書」としては、これら四つの要素が漏れなく記載されていることが必要になります。さらに、特許明細書の記載項目に対応する内容を漏れなく記載するためには、これら4つの要素の下位概念に当る「背景技術とその問題点」、「具体例、変形例、応用例の構成」、「具体例、変形例、応用例の作用」、「具体例、変形例、応用例の効果」も必要になります。

18.カード式発明提案書

(1)マトリックスカード(MC)を使う
ここでは、メモカードを利用した「発明提案書」の作成方法を提案いたします。この方法によれば、強い権利を取得するために必要な、発明の上位・中位・下位概念をもれなくチェックする手順が組み込まれていますので、専門家の方々にとって実際の特許明細書を作成する際の設計図になるしっかりとしたものが完成できます。
この設計図を「開発成果展開マップ」といい、具体的には、マトリックスカード(MC)というものを使用してまとめることで、開発成果が一覧できるマトリックス表を作成します(MCを使って問題解決を図ることをMC法という)。
MC法を利用して「発明提案書」を作成する目的は、発明を十分に展開した特許明細書の設計図(「開発成果展開マップ」)を完成させることにあります。「発明提案書」は、「開発成果展開マップ」をMCで作成することが最初で、その後で必要に応じて、この「発明提案書」を特許明細書のスタイルに変換することになります。

(2)具体的な作成手順 その1
ここでは、「開発成果展開マップ」を「カード式発明提案書」とした場合の作成手順を説明します。
最初に、発明説明書(発明提案書)のタイトル(テーマ)である「発明の名称」を中心のカードに記載します。発明の大きな柱は、①発明の目的、②発明の構成、③発明の作用、④発明の効果の四つということです。

 

質問1.とりあえず、名称を決めてください。後で発明の実体がはっきりしたら、書き直してもかまいません。

(3)具体的な作成手順 その2
①「発明の目的」は、問題を解決する際に、最も重要な「何のために」という疑問に答えることです。したがって、真ん中の一番上のカードに①発明の目的を記載します。実際には、従来の技術のカードに内容を記載した後に記載します。発明の用途も「発明の目的」と同じカードに記載します。
注、カードの1セル面(白紙の面)に「発明の目的」と記載します。「9画のマトリックスカード」の中心のセルに「発明の目的」と記載し、以下の質問の答えとなる内容を周辺のセルに記載します。


質問2.その発明は何に関するものですか?その発明は新規なものですか?他の技術の改良ですか?
装置等の全体に関するものですか?それとも特定の部分についてのものですか?(ここには、技術分野、利用分野を記載し、合わせてその発明の概要と用途を記載します。)

(4)具体的な作成手順 その3
①「発明の目的」は背景技術の問題点を解決することです。したがって、「①発明の目的を記載するカード」の隣(右隣)のカードに、背景技術とその問題点について記載します。

注、カードの1セル面(白紙の面)に「従来技術」と記載します。「9画のマトリックスカード」のカードの中心のセルに「背景技術」と記載し、以下の質問の答えとなる内容を周辺のセルに記載します。


質問3.その発明の技術分野には、従来どのようなものがありましたか?(ここには、その発明に最も近い背景技術(従来品)を記載します。特許公報、文献、カタログ等があったら、具体的に名称や番号等その資料を特定します。)

(5)具体的な手順 その4
いよいよ①「発明の目的」のカードに①「発明の目的」である「解決課題」を記載します。
注、「9画のマトリックスカード」の中心のセルに「発明の目的」と記載してあるカードの周辺のセルに、以下の質問の答えとなる内容を記載します。

質問4.背景技術にはどのような欠点、問題点がありましたか?背景技術(従来品)のどの欠点をどのようにして解決しましたか? 目的は1つですか?複数ありますか?

(6)具体的な作成手順 その5
②「発明の構成」は、目的に対する手段を示すものですから、①発明の目的のカードと対称位置に当る、真ん中の一番のカードに記載します。②「発明の構成」は、あくまで開発技術の有利な効果を生じる開発技術の構成を記載します。
注、カードの1セル面(白紙の面)に「発明の構成」と記載します。
「9画のマトリックスカード」の中心のセルに「発明の構成」と記載し、以下の質問の答えとなる内容を周辺のセルに記載します。

 

質問5.その開発技術の要旨は何ですか?目的達成の手段としてなくてはならない構成要件(部分)は何ですか?あるほうがよい構成要件(部分)は何ですか?構成要件(部分)と構成要件(部分)との結合関係はどうなっていますか?取り除ける構成要件(部分、結合関係)は除外します。一口に言ってその開発技術のポイントは何ですか?

(7)具体的な作成手順 その6
④「発明の効果」は、「解決結果」のことであり、左側の真ん中のカードに記載します。開発技術の有利な効果を記載します。効果には、質的な効果と量的な効果がありますので、両方とも記載します。注、カードの1セル面(白紙の面)に「発明の効果」と記載します。
「9画のマトリックスカード」の中心のセルに「発明の効果」と記載し、以下の質問の答えとなる内容を周辺のセルに記載します。

質問6.その発明が完成して便利になったことは何ですか?目的達成の度合はどの程度ですか?

(8)具体的な手順 その7
③「発明の作用」は、②「発明の構成」から生じる動き、働きであり、④「発明の効果」を生じる原因となるものですから、④「発明の効果」のカードと対称位置に当る、右側の真ん中のカードに記載します。開発技術の有利な効果がどんな作用(機能)から生じるのか、その作用(機能)を記載します。
注、カードの1セル面(白紙の面)に「発明の作用」と記載します。「9画のマトリックスカード」の中心のセルに「発明の作用」と記載し、以下の質問の答えとなる内容を周辺のセルに記載します。

質問7、何のどこをどのようにして使いますか?何のどこがどのように動きますか?何のどこがどのように働きますか?開発技術の原理は何ですか?
何のどこがどうなりましたか?どんなことができるようになりましたか?

(9)具体的な作成手順 その8
③「発明の作用」のカードに記載した内容と同じ作用(機能)を果たすことのできる他の構成・構造を考えます。②「発明の構成」に記載した技術と同じ「解決原理」による他の構成・構造を考えます。具体例、変形例、応用例等(下位概念、同位概念、上位概念)を考え出します。最低でも三種類程度考えます。②「発明の構成」と関係の深い開発技術の具体例、変形例、応用例等は「②発明の構成のカード」の隣(左隣)のカードに記載します。注、カードの1セル面(白紙の面)に「実施例」と記載します。「9画のマトリックスカード」の中心のセルに「実施例」と記載し、以下の質問の答えとなる内容を周辺のセルに記載します。

質問8.開発技術の代替技術は考えられないか?開発技術の一部を変形しても同じ作用(機能)が実現できのではないか?開発技術に何かを付加したらさらに便利にならないか?開発技術は上位の目的から見たら一実施例に過ぎないのではないか?その発明の具体例を図面に従って説明するとどうなりますか?何のどこに何をどうしましたか?何のどこをどう変えましたか?何のどこをどうしたところが新しいですか?

(10)具体的な作成手順 その9
開発技術の具体例、変形例、応用例等(下位概念、同位概念、上位概念)の作用は発明の実施の形態や実施例の作用として、「④発明の作用のカード」の隣(下隣)のカードに記載します。
注、カードの1セル面(白紙の面)に「具体例の作用」と記載します。「9画のマトリックスカード」の中心のセルに「実施例の作用」と記載し、以下の質問の答えとなる内容を周辺のセルに記載します。

質問9.開発技術の代替技術は考えられないか?開発技術の一部を変形しても同じ作用(機能)が実現できのではないか?開発技術に何かを付加したらさらに便利にならないか?開発技術は上位の目的から見たら一実施例に過ぎないのではないか?

(11)具体的な作成手順 その10
④「発明の効果」の下位概念に当る開発技術の具体例、変形例、応用例等(下位概念、同位概念、上位概念)の効果は、「④発明の効果のカード」の隣(上隣)のカードに記載します。開発技術の具体例、変形例、応用例等の質的な効果と量的な効果を記載します。注、カードの1セル面(白紙の面)に「実施例の効果」と記載します。「9画のマトリックスカード」の中心のセルに「実施例の効果」と記載し、以下の質問の答えとなる内容を周辺のセルに記載します。

質問10、開発技術の具体例、変形例、応用例等が完成して便利になったことは何ですか?図面に描かれたものの具体的な効果、利点は何ですか?開発技術の具体例、変形例、応用例等により、効率、安全、耐久性、省力等どんなよいことが増えましたか?騒音、危険、故障、無駄等どんな都合の悪いことが減りましたか?趣味感、美感、意外性等の二次的効果は何ですか?

(12)具体的な手順 その11
開発技術の具体例、変形例、応用例等を考えることにより、当初の発明の目的自体を変更する必要が生じることもあります。具体例、変形例、応用例等の各々の目的は勿論、それらの目的を組み合わせた新しい目的をも考える必要が生じることがあります。必要なら具体例、変形例、応用例等について試作・実験をしてそれらの作用・効果を確認します。注、「9画のマトリックスカード」の中心のセルに「発明の目的」と記載してあるカードの周辺のセルに、以下の質問の答えとなる内容を記載します。

質問11.具体例、変形例、応用例等の目的・効果は何か?具体例、変形例、応用例等から考えられる複合目的・効果は何か?開発技術の上位目的は何か?「発明の目的→発明の構成→発明の作用→発明の効果」の整合性に問題はないか?

19.特許明細書案の作成

(1)開発成果展開マップから特許明細書案への変換 その1
「開発成果展開マップ」は、発明説明書としての必要な内容が記載されていますが、特許明細書そのものではありません。そのため、このまま特許庁へ提出するわけにはいきません。そこで、「開発成果展開マップ」を特許明細書の様式に合わせる作業が必要となります。「開発成果展開マップ」を特許明細書の様式に変換したものを特許明細書案と呼ぶことにします。後は、この特許明細書案を知的財産部門の担当者や弁理士に提出し、特許庁へ提出できる特許明細書にしてもらうことになります。マトリックスカード(MC)のフラクタル構造(入れ子構造)が理解できる方には、「開発成果展開マップ」が発明説明書として理解できるため、あえて特許明細書の様式に変換しなくとも(特許明細書案を作成しなくとも)、いいことになります。

(2)開発成果展開マップから特許明細書案への変換 その2
「開発成果展開マップ」には、空間配置型と時間配置型が考えられます。発明を把握する場合には「発明の目的」、「発明の構成」、「発明の作用」、「発明の効果」等の配置に意味を持たせた空間配置型が理解しやすく便利です。しかし、特許明細書という特許法が要求する様式においては、記載の項目とその順序が決められていて、これを守らなければなりません。そこで、空間配置型の「開発成果展開マップ」を時間配置型に変換する必要があります。空間配置型の「開発成果展開マップ」では、中心のカードが「発明の名称」、「発明の目的」が真ん中の列の上のカード、「発明の構成」が真ん中の列の下のカード、「発明の効果」が真ん中の行の左のカード、「発明の作用」が真ん中の列の右のカード、つまり、発明の四要素が上下左右の位置を占めています。「従来技術」は「発明の目的」に関連するためその右隣のカードに、「具体例、変形例、応用例」は「発明の構成」の下位概念、同位概念、上位概念に当りそのカードの左隣のカードに、「具体例の作用」は「発明の作用」の下位概念に当るからその下隣のカードに、「具体例の効果」は「発明の効果」の下位概念に当るからその上隣のカードに、それぞれ記載されることになります。カード式の「発明提案書」を直接特許明細書を作成する際の参考資料(特許明細書の設計図)とすることができます。この場合には、変換の手間が省けます。

(3)開発成果展開マップから特許明細書案への変換 その3
これに対し、時間配置型の「開発成果展開マップ」では、特許明細書の記載項目順に配置されます。中心のカードに「発明の名称」、その下のカードに「従来技術とその問題点」、その左のカードに「発明の目的(解決課題)」、その上のカードに「発明の構成(解決手段)」、その上のカードに「発明の作用(解決原理)」、その右のカードに「具体例、変形例、応用例」、その右のカードに「具体例、変形例、応用例の作用」、その下のカードに「具体例、変形例、応用例の効果」、その下のカードに「発明の効果(解決結果)」といったように、それぞれのカードを「の」の字(時計回り)に時系列に配置します。すると、特許明細書の記載項目の順序である、①【発明の名称】→②【背景技術】→③【技術分野】、【発明が解決しようとする課題】→④【課題を解決するための手段】(【特許請求の範囲】)→⑤【発明の効果】→⑥【発明の最良の形態】→⑦【実施例】(具体例、変形例、応用例の構成)→⑨のように記載された「発明提案書」が完成されます。
実際の特許明細書の様式では、【特許請求の範囲】は【明細書】とは別の書類になっています。

20.MCの活用

(1)MCを有効に使うコツ
説明の都合上、1つの手順をしましましたが、マトリックスカード(MC)というメモカードによる「開発成果展開マップ」はどこから記載してもよいということが特徴ですので、この手順にとらわれることはありません。発明の四要素を上下左右に空間配置された位置関係を守るといったルールに従えば、その対応関係(整合性)を確認できますので、その確認さえすればどこから記載してもかまいません。ただし、9枚すべてのカードを記載することとします。記載する内容が多い場合には、新しいカードを使って「9画のマトリックスカード」の中心のセルにテーマを記載し、その周辺のセルにその構成要素(内容)を記載します。その際、カードの裏面の1セル面に必ずテーマを記載しておくようにしてください。これで、後のカードの整理が容易になります。

(2)MEMODAS®の利用
そこで、アプリケーションソフト「MEMODAS®」を使用する場合には、移動したい内容を指定してカット(切り取り)し、移動すべき箇所にペースト(貼り付け)を行うといった作業をして、いくつかの箇所に点在している同一項目の内容を一個所にまとめたり、1つの項目(1枚のカード)をそっくり必要な箇所へ移動することもできますので、この機能を使って特許明細書の様式に合わせることにします。アプリケーションソフト「MEMODAS®」では、9枚のカードを時系列に並べた状態(「の」の字に関係線でつなぐ)でファイル出力を指示することにより、各カードに記載された内容が並べた順番でアウトライン状(階層構造を持った箇条書き)にワープロソフトに持っていけますので、その他の細かな編集をワープロソフト上で行うことで「特許明細書案」を簡単に完成できます。

21.発明の論理

(1)発明の論理的構成
弁理士の嶋宣之先生は発明の概念を説明するに当たって、「発明の論理構成」なる図表を紹介されています。
この「発明の論理構成」は、従来の特許法施行規則で定められた特許明細書の様式に従った「発明提案書」の構成しか知らない発明者にとっては、画期的な図表ではないかと思います。発明を従来の技術との比較で説明しようとする点で、発明者にはわかり易いものといえます。
しかも、背景技術に対して、その構成を「今まで、こうしていたので、」とし、これと因果関係にあるその欠点を「こんなに不便だった」という表現で捉えると共に、発明については、その構成を「今度は、こうしてので、」とし、これと因果関係にあるその効果を「こんなに便利になった」という表現で捉えることで、難しい特許用語を使うことなく技術を表現するかたちが発明者である研究者、技術者に受け入れ易いものです。
「新しい発明提案書」の構成は、このような従来の技術との比較発想と技術概念としての因果関係で発明を説明する方法が参考にさせていただきました。


22.新しい発明提案書

(1)新しい発明提案書のカタチ
「発明提案書」には、発明者を特定する内容と権利関係に関する内容(特許を受ける権利を会社へ譲渡する旨の内容)等を記載した「表紙」と、発明を説明する「発明説明書」とからなっています。ここで提案する「発明提案書」の「発明説明書」は、「発明の目的」に相当する課題を記載した「課題設定シート」と、その課題を解決するための「発明の構成」と「発明の作用」、「発明の効果」に相当する解決手段を記載した「発明説明シート」とにわけた点が特徴です。
ニーズは発明の母といわれるとおり、発明をするに当たってニーズは重要です。勿論、研究所で生まれるシーズから発明が完成することもありますが、発明を企業競争の手段として考えた場合には、身近なニーズを意識せざるを得ません。
ニーズといえば、その発生源である顧客に近い位置にいる営業担当者が主役といえます。顧客も気づいていない潜在ニーズをどう発見するか。そこで、課題設定が必要になります。うまい課題設定ができれば、発明の半分は完成したも同然といわれる所以です。反対に決まっている課題を解決するのは、日本の研究者、技術者の得意とするところです。「新しい発明提案書」では「課題設定シート」を営業担当者が作成し、「発明説明シート」を研究者、技術者が作成することも考えて作られています。

23.課題設定シート

(1)発明提案書の課題設定シート
「発明提案書」の「課題設定シート」は、従来の技術を記載するものであり、文章を記載する頁と図面を記載する頁とからなります。ここで掲げた見本は、「課題設定シート」の文章の頁(1/2)です。記載項目としては、a.従来の技術の構成、b.従来の技術の作用、c.従来の技術の欠点、d.課題設定(発明の目的)の4つです。a.従来の技術の構成では「今までこうなっていた(こうしていた)ので」に当たる内容を記載します。b.従来の技術の作用では「こんな時にこんな状態となるため」に当たる内容を記載します。c.従来の技術の欠点では「こんなに不便だった」に当たる内容を記載します。d.課題設定(発明の目的)では「そこで、こう改善したい」に当たる内容を記載します。なお、以上の項目は、「課題設定シート」の図面の頁(2/2)にそって詳細に説明します。

24.発明説明シート
(1)発明提案書の発明説明シート その1
「発明提案書」の「発明説明シート」その1は、発明の中心的な内容を記載するものであり、文章を記載する頁と図面を記載する頁とからなります。ここで掲げた見本は、「発明説明シート」の文章の頁(1/4)です。記載項目としては、O.背景技術と発明との共通な構成、A.発明の構成、B.発明の作用、C.発明の効果の四つです。
O.背景技術と発明との共通な構成では「両者共このようになっている」に当たる内容を記載します。A.発明の構成では「そこで、今度はこうしたので」に当たる内容を記載します。B.発明の作用では「こんな時にこんな状態になるため」に当たる内容を記載します。C.発明の効果では「こんなに便利になった」に当たる内容を記載します。なお、以上の項目は、「発明説明シート」の図面の頁(2/4)にそって詳細に説明します。

(2)発明提案書の発明説明シート その2
「発明提案書」の「発明説明シート」その2は、発明の実施の形態(実施例)について記載するものであり、文章を記載する頁と図面を記載する頁とからなります。ここで掲げた見本は、「発明説明シート」の文章の頁(3/4)です。記載項目としては、D.発明の実施の形態(実施例)、E.発明の実施の形態(実施例)の効果の2つです。D.発明の実施の形態(実施例)では「必要な機能を果たすための実施の形態(実施例)は」に当たる内容を記載します。E.発明の実施の形態(実施例)では「各実施の形態(実施例)はこんなに便利になった」に当たる内容を記載します。なお、以上の項目は、「発明説明シート」の図面の頁(4/4)にそって詳細に説明します。


25.新しい発明提案書の効用

(1)新しい発明提案書の効用
MCによる「開発成果展開マップ」を完成することで、発明情報として記載すべき「発明の目的」、「発明の構成」、「発明の作用」、「発明の効果」の四要素と、これらの下位概念に相当する「従来技術とその問題点」、「具体例、変形例、応用例の構成」、「具体例、変形例、応用例の作用」、「具体例、変形例、応用例の効果」のすべてが記載されることになるから、完成した「開発成果展開マップ」を設計図として、発明者は発明の位置づけを明確にした「発明提案書」が完成できます。仮に、その「発明提案書」の項目で十分な記載がなされていないものがあったとしても、発明の構成要素である四要素の「発明の目的」、「発明の構成」、「発明の作用」、「発明の効果」という対応関係をたどることでその内容を推測できるので、特許担当者および弁理士は発明の内容を的確に把握できます。また、メモ感覚で思考のシミュレーションをしながらまとめていくことになりますので、発明者の思考過程がそのままマップに表現されます。したがって、発明者に記載内容について聞き取りをする場合に、的確な質問ができます。


26.発明データベース

(1)MEMODAS®で発明情報データベースを構築
MC法をパソコン上できるようにした「MEMODAS®」というアプリケーションソフトがあります。発明者がこの「MEMODAS®」を使用して、日々の気づきをメモ感覚で入力すれば、自動的に気づきメモのデータベースが構築されていきます。蓄積されたメモは、読み返したり、書き換えたり、位置を変えたりすることで、新しい気づきを生み出すアイデアデータベースが構築されます。自分の思考過程がそのままディスプレイに表示され、その過程を逐一確認しながら納得できるまで思考のシミュレーションができます。そして、MCによる「開発成果展開マップ」を「カード式発明提案書」として採用した場合には、「MEMODAS®」による発明情報データベースが構築されます。「MEMODAS®」では、思考過程がそのまま記録されますので、思考をいつ中断してもその後の追跡が容易であり、自分の思考過程を他人に見せることで有効な意見が得られることもあります。

(2)「開発成果展開マップ」はコミュニケーションツール
特に、空間配置された「開発成果展開マップ」の場合には、一定の規則の上に一覧表示されているため、その対応関係を直感的かつ速やかに捉えることができます。そのため、リエゾンマンおよび弁理士は、提案された発明を特許出願する場合に、その発明の上位概念化に専念できます。リエゾンマンは、特許出願に際し経営戦略との整合性のチェックに専念できます。また、発明者が研究開発の過程で「開発成果展開マップ」を作成していれば、リエゾンマンは発明の経過状況を知ることができるため、当該技術分野の情報に基づいて適時に適切な開発の方向性を発明者に示すことができます。発明者は、「カード式発明提案書」を作成することで、従来のように、いきなり面倒な発明提案書を作成しなくてよいため、発明に専念できるとともに開発成果を客観的かつ正確に捉えることができます。発明者、リエゾンマン、弁理士が一目瞭然の「カード式発明提案書」という共通言語(共通のツール)によるコミュニケーションが可能となるため、各業務の連携が円滑になり無駄な時間が省け出願費用のコストダウンが図れます。


27.有効な発明を完成するには

(1)課題から特許まで問題の発生から具体的に問題を解決し、その成果を知的財産として自分が理解できる程度に当初の問題を捉え直して課題を設定する必要があります(課題設定能力の発揮)。課題設定により、要するに何をすればいいのかがわかれば、解決のためのヒントやアイデアが出やすくなります。アイデアが生まれたら構想図を描いたり必要なら試作品を製作して、アイデアの有効性を確認します(問題解決能力の発揮)。解決案の有効性が確認できたら、開発の成果をまとめます。これは発明としての内容を決めることですが、開発の成果を把握することと同じことです。
しかし、特許保護強化の背景を考えると、それだけでは不十分です。
これからは、発明として捉えた技術の「解決原理」を探り、そこから発明をさらに展開する思考が必要になります。発明の内容の再構成とでもいえる思考過程をたどることになります。これは、発明者とリエゾンマンとの共同作業が重要となるものです。出願発明が決まったら特許明細書の作成を専門家に依頼することになります。発明の展開が十分であれば、出願後の権利化に係る作業もやりやすくなります。

(2)課題の捉え方と原因追及
問題を解決するためには、まずその問題をよく理解しなければなりません。問題を解決しやすくするために課題をうまく設定するということが必要になります。課題の捉え方の問題です。鉛筆が机から落ちて芯が折れてしまい困りものです。これは問題だと思いますが、なぜ机から鉛筆が落ちるのでしょうか?それは、鉛筆は転びやすいからだとわかりました。なぜ、転びやすいのでしょうか?机が傾いているわけではありません。それは、使っている鉛筆の断面が丸いからでした。ここまでくると、鉛筆の断面の形状を変えれば転びにくくなるのではないかという考えが生まれます。課題の捉え方が重要な所以です。これは、管理技術のIE(生産工学)の「現象の追求」と、QC(品質管理)の「原因の追求」という問題解決アプローチと同じです。
これらの手法は、分析的に問題を追求しますので、分析的アプローチといわれるものです。

 

(3)課題の捉え方とアイデア
「鉛筆を転び難くする」ための解決策を考えてみましょう。
分析的アプローチの結果、鉛筆が転びやすいのは鉛筆の断面が丸いからだとわかっています。その結果、鉛筆の「断面を多角形にする」というアイデアが生まれ ます。普通はいいアイデアが生まれたとして、すぐにこのアイデアを採用することになります。しかし、他の人も同じことを考えているかもわかりません。い や、他にもっといいアイデアがあるかもわかりません。一つのアイデアが生まれたら、それで良しとしないで、もっといいアイデアはないかと考えることは、技 術者の必須条件です。それも、質的に違うアイデアを3つ以上考えたいものです。2つ以上なければ比較できませんし、3つ以上出すことで思考の幅を広げる努 力をします。「鉛筆を転び難くする」という課題を考え直してみます。それは何のためにするのか?それは、要するに「鉛筆を机から落ちないようにする」とい う目的があることに気がつきます。これは、課題の抽象度を上げることに他なりません。課題の抽象度が上がったことで「鉛筆を転び難くする」には、「断面を 多角形にする」の他に「スタンドに差す」や「グリップをはめる」といった異質のアイデアが生まれます。

原因結果系統図

目的手段系統図


(4)機能的アプローチ
技術・商品開発を行うに当たって、私たちは顧客の要求に応じたもしくは自己の問題意識により設定した課題に取り組みます。この場合、問題を抱えている現実の世界であれこれ考えてもうまいアイデアが浮かばないことはよくあることです。そこで、現実の世界で捉えた課題(具体的)を抽象的な機能に置き換えて、同一の機能を果たすことのできる解決案を探すことが有効であることが管理技術のVE(価値工学)で証明されています。つまり、現状→解決案というストレートな試みではなかなか解決できない現状の問題は、顧客の要求または現状の問題を解決するために、まずこれらを課題として捉え、その課題を明らかにする(課題設定をする)ことで、必要とする機能は何かが明確になります。別の言葉でいうと、「要するに何をすればいいのか?」、「要するにどんな機能を果たせばいいのか?」を明確にすることです。これにより、現状のレベルより上位のレベルである抽象的な機能という概念を基準として課題を解決することで、現状では不可能であったより広範囲な発想が可能となります。要求または現状→課題(目的)→必要な機能→発想→解決案というルートで思考を進める機能的アプローチが課題解決に有効な所以である。これを発明展開に応用すれば、解決原理(機能)を捉えて発想することといえます。


28.発明の理解力の向上

(1)技術的概念の定義
管理技術としてのIE、QCは、現状の問題を細かく分析して問題解決のヒントをつかみ、改善策を追求していくという手順を採用します。このため、これらの管理技術は、分析的アプローチと呼ばれています。
これに対して、同じ管理技術であるVE(価値工学)では、問題の対象であるモノ、コトが本来持つべき機能は何かを明確にし、その機能から解決策を発想するといった手順を採用しています。このため、VEは機能的アプローチと呼ばれています。
VEでは、モノ、コトが目的を達成するための持っている「働き」を機能として捉え、その機能を名詞と動詞の組み合わせで「~を××する」と表現します。たとえば、ドアの取手の機能を「ドアを開く」とか「ドアを閉じる」というように表現します。創造工学の一手法である等価変換理論では、技術の本質要素を限定条件(c)と等価次元(ε)とからなるcεとして捉え、これを形容詞・副詞句(c)と動詞(ε)によって言葉で表すこととした等価変換言語処理法なる技術概念の定義する手法が採用されています。等価変換言語処理法では、技術行為を名詞と形容詞・副詞句と動詞との組み合わせで「~を~で~する」と表現します。なお、技術の本質的内容を権利範囲として記載した特許請求の範囲では、構成要素であるモノ、コト(名詞)は内容を限定する修飾語が付されることが多いので、構成要件を「~の~を~で~する」という表現で規定することができます。
技術を言葉で表現する概念定義の事例として、実開昭59年2839号、「足場装置」の実用新案登録請求の範囲に記載されている構成要件について実施したものを示すと次のとおりです。構成要素は、①骨組体②半円状のガイド枠③複数本の径方向枠④幕体⑤軸方向枠⑥横架材⑦脚注⑧足場板の8つからなっていることがわかります。
 それぞれの構成要素について、概念定義を試みると次のとおりです。
①骨組体とは、複数の脚注を自立可能に支持する。
②骨組体とは、足場板を水平に支持する。
③半円形状のガイド枠は、複数本の径方向枠を同一立面上で揺動自在に案内する。
④複数本の径方向枠は、幕体を扇状に開閉自在に支持する。
⑤幕体は、ガイド枠側の側面を垂直に覆う。
⑥幕体は、骨組体の上方を半円筒上に覆う。
⑦軸方向枠は、対向する径方向枠同士を一体状に結合する。
⑧横架材は、ガイド枠側の脚柱を変形しないように支持する。
⑨脚柱は、足場装置を地上に定着する。
⑩足場板は、作業床を提供する。

ここで骨組体についての概念定義を試みますと、①骨組体は「複数本の脚柱を自立可能に組み立てる」及び「足場板を水平に支持する」の2つの内容から成り立っていることがわかります。
なお、公開公報の実用新案登録請求の範囲では、足場板が「水平に」という様態表現語(形容詞句・副詞句)の記載がありませんが、公開公報の図面の記載および足場装置の常識から、このように判断しました。
以上のように、等価変換言語処理法の考え方を基本として、特許(実用新案)の解析を行ってみると、難解な特許請求の範囲も技術者にもわかりやすい内容に変換されることになります。


29.階層構造の表現

(1)階層構造の2次元表現
概念の上位または下位を表す階層構造を2次元に表示するには、一般には上下に伸びる樹枝状(ピラミッド状)の系統図が作成されます。しかし、上位概念に対する下位概念の数が多い場合には、これら複数の下位概念(複数の同一概念)を同じレベル(同一の水平位置)に配置することは、空間的な制限から無理になります。階層構造を上下に伸びる樹枝状(ピラミッド状)の系統図を階層構造の正面図であるとすれば、階層構造の平面図とはどんなものとなるか?上位概念を中心にして、その周辺に下位概念を配置すると、いわゆるマンダラ絵図と同じ図形が1つ完成します。1つの正方形(上位概念)の回りに同じ大きさの8つの正方形(下位概念)を並べると3行3列のマトリックス図形が完成します。

(2)階層構造の平面図(二階層)
さらに、このマトリックス図形の周辺の1つの正方形(下位概念)を中心にして、その周辺に更なる下位概念を配置すると、同様のマトリックス図形が完成します。
1つの課題(T)の回りに、その解決案につながる8つのヒント(A,B,C,D,E,F,G,H)を並べると、3行3列のマトリックス図形(中心のTと周辺のA,B,C,D,E,F,G,H)が完成します。さらに、このマトリックス図形の周辺の8つのヒント(A,B,C,D,E,F,G,H)を中心にして、その元になる1つのヒント(たとえばA)を中心にして、そのヒントから生まれる8つのアイデア(a1,a2,a3,a4,a5,a6,a7,a8)をその周辺に配置すると、そこに3行3列のマトリックス図形が完成します。同様に、残りの7つのヒントについて、この操作を繰り返すと1つのマトリックス図形の周りに8つのマトリックス図形が配置されます。結局、1つの上位概念に関する8つの下位概念を表した2階層分の階層構造が一面に展開されることになります。つまり、2階層分の階層構造の平面図の完成です。

なお、参考までにいうと、2階層の階層構造を2次元表示する方法には、WBS(Work Breakdown Structure:作業分割構成)という管理技術で使われている図解があり、一覧性も良好なものといえます。
WBSの系統図では、1階層目は課題(T)の下に横一列に課題を解決するためのヒント(A,B,C,D,E,F,G,H)を並べます。2階層目は、1階層目のヒント毎(A,B,C,D,E,F,G,H)に縦一列にそのヒント(たとえばA)から生まれるアイデア(a1,a2,a3,a4,a5,a6,a7,a8)を並べます。

階層構造の平面図(2階層)

WBS(作業分割構成)の階層構造表現(2階層)

(3)概念の階層構造
概念には、内包と外延という考え方があります。
概念の適用される範囲を外延といい、その外延に含まれる諸事物が共通に有する徴表(性質)の全体を内包といいます。たとえば、金属という概念の外延は金、銀、銅、鉄などをあげることができます。金属の内包とは、固体状態で金属光沢、属性、延性を持ち、種々の機械的工作を施すことができ、かつ電気および熱の良導体である、といえます。
ところで、「筆記具」という概念について考えてみますと、毛筆、ペン、鉄筆、万年筆、黒鉛鉛筆、色鉛筆、シャープペンシル、白墨、クレヨン、クレパス、ボールペン、多色ボールペン、シャープペンシル、シャープペンシルとボールペンの組み合わせ品など似た概念が思い出されます。しかしながら、これらの概念は似てはいるものの、その概念のレベルの違ったものが一緒になっています。
「毛筆」、「ペン、鉄筆」、「万年筆」、「黒鉛鉛筆、色鉛筆」、「シャープペンシル」、「白墨、クレヨン、クレパス」、「ボールペン、多色ボールペン」、「シャープペンシル」、「シャープペンシルとボールペンの組み合わせ品」となり、「黒鉛鉛筆、色鉛筆」は「鉛筆類」と、「白墨、クレヨン、クレパス」は「白墨、クレヨン類」と、「ボールペン、多色ボールペン」は「ボールペン」と、「シャープペンシルとボールペンの組み合わせ品」は「複式筆記具」とすれば、それぞれの概念レベルを合わせることができ、わかりやすくなります。