手法一覧

不具合対策、リスクマネジメント


不具合対策、リスクマネジメントの手法一覧

手法名 適用分野等 開発者、運用機関 手法の概要 手法の手順 I-TRIZと比較した利害得失
 FMEA
(Failure Mode Effects Analysis)
故障モードの影響解析 1940年代
米陸軍
故障モード影響解析のことで、設計の不完全や潜在的な欠点を見出すために構成要素の故障モードとその上位アイテムへの影響を解析するボトムアップ手法である。 1.システムの機能・性能を確認
2.システムの分解レベルを決定
3.システムの仕様と製造図面を基に、機能ブロック図を作成
4.機能ブロック図から、信頼性ブロック図を作成
5.信頼性ブロック図を基に、各ブロック毎の故障モード(状態)を全て洗い出す
6.洗い出した故障モード(状態)を、現実的な観点から整理・統合する
7.整理・統合された故障モード(状態)の、推定原因を全て洗い出す
8.「故障の影響」「影響度」「単一・致命的故障」「調べ方」「防ぐ方法」をFMEAシートに記入する
9.設計変更等必要な場合に、FMEAシートの「防止対策処置の確認」を行う
 自動車業界では、ISO 9000の技術仕様を定めた「ISO TS 16949」でFTA,、FMEAを参照しており、幅広く取り組まれている。
FMEAは不具合の防止を目的としているが、不具合を予測をする分析手法であり、不具合の防止策までは考えない。これに対して、I-TRIZのFP(不具合の予測と未然防止)は、不具合の防止策をも考える問題解決手法といえる。ただし、FMEAの書式を整えるものではないので、FMEAの代用はできない。
FTA
(FaultTree Analysis)
問題発生の因果と発生可能性 1961年
ベル研究所のH・A・ワトソン
ボーイング社
下位アイテム又は外部事象、若しくはこれらの組合せのフォールトモードのいずれが、定められたフォールトモードを発生させ得るか決めるための、フォールトの木形式で表された解析である(JIS Z8115:2000)。
信頼性または安全性上、その発生が好ましくない事象を取り上げ、この事象が発生する過程を論理記号とツリーを使ってトップダウン思考で展開し、発生経路および発生原因、発生確率を解析する。
発生した問題の分析や、想定される問題原因の推定の場面で、FTAを使い、論理的に考えることで、経験だけでは陥りがちな落とし穴に事前に気がつくきっかけが得られ、適切な対策ができるようになる。 自動車業界では,ISO 9000の技術仕様を定めた「ISO TS 16949」でFTA, FMEAを参照しており、幅広く取り組まれている。
「FTA」は、I-TRIZのプロブレム・フォーミュレーション(PF)を使った問題メカニズムを発見する際に、参考になる。
QFD(Quality Function Deployment)
品質機能展開
顧客が要求する品質を基に設計品質を決定し実現する
JIS Q 9025:2003
1972年
赤尾洋二
水野滋
一般財団法人日本科学技術連盟
顧客のニーズを技術に結びつけ、どのニーズに答え(製品企画)、どの技術を開発するかを決定する作業であって、ニーズ(要求品質)と技術(品質特性)を結びつけたマトリックス(品質表)を作成し、品質表上で重要度の採点を行い、その結果をもとに製品を企画し、技術を開発する。最終的には、その設計の意図(品質特性)を製造工程まで展開する。 1.ユーザーの要求を把握する
2.原始データを要求項目に変換する
3.要求項目から要求品質に変換する
4.要求品質展開表を作成する
5.品質要素展開表を作成する
6.品質表を作成する
7.企画品質を設定する
8.要求品質重要度を品質要素重要度に変換する
9.設計品質を設定する
成熟期にあるシステム(商品やサービス)の場合には、ユーザ自体がニーズを理解していないため、顧客の声(VOC:Voice of customer)を聞いても、正しいユーザの要求が入手できない。そのため、品質機能展開の要求項目の信ぴょう性が疑わしいものとなり、設計された商品やサービスが売れないという現象が起きる。
I-TRIZの「戦略的世代進化(DE)」を使用する場合には、顧客の潜在ニーズを満足する商品、サービスの提案をするといった意識が働くようになっている。
タグチメソッド
品質工学
従来の品質管理では見つからなかった問題点を明らかにし、未然に防止する方法を提供する 1980年
田口玄一
品質特性のばらつきが少ない製品を、開発・設計及び工程設計段階で作りこむための、工学的、統計的手法であり、品質工学とも呼ばれる。
改善を効率的に行うには、(1)効果を確実にしかも短時間で確認する手段は、いじめればわかる(SN比の活用)。(2)根本メカニズムに関係して効果が大きいアイデアを引き出す手段は、試せばわかる(パラメータ設計)。
製品開発は、製品設計の前に、パラメータ設計のやり方で、事前に優れた技術開発をしておき(フロントローディング)、製品設計では、各種条件を総合的に判断して最適なバランスに設計する「二段階設計」を行う。
パラメータ設計の例
1.テーマの分析
2.目的機能の明確化
3.理想機能の定義(y = \beta M)
4.計測特性は何か(信号因子とノイズの選択)
5.SN比や感度を求める
6.制御因子を決める
7.直交表に制御因子を割り付けて、信号やノイズとの直積実験を行う
8.データ解析を行う
9.要因効果図を作成して最適条件と現行条件やベンチマーク条件を求める
10.確認実験で最適と現行の利得の再現性をチェックする
11.再現性が悪い場合は特性値やノイズや制御因子の見直しを行う
従来の未然防止の方法論であるFTA、FMEAを使用する技術者は、その人の知識や経験から予測できる不具合には必ず対応策を反映するので、市場で不具合は発生しないはずである。しかし、実際には想定外の不具合が発生してしまう。
人間の能力の限界(知識や経験の限界)を前提とした、見落とし、未知、想定外に対応する予測法としての「タグチメソッド」が新しい未然防止の方法論といえる。
「タグチメソッド」の思想は、「リーン製品開発方式」と一致しており、I-TRIZと併用することで、設計品質が多いに高まる。
公理設計

原著:The Principles of Design  N. P. Suh, Oxford University Press, 1990
最適設計案の探索 1980年代
Num Suh
設計の必要機能が互いに独立であるときに、“良い”設計が行われる(独立公理)と、”情報”量の最小化が達成されていることにより“良い”設計である(情報公理)という2つの公理は、その時合成して作られた解決策がどの程度“良い”かを調べることで、最良な設計解を導き出す。 1つ目の設計公理は「独立公理」と呼ばれ、要求機能が互いに独立している設計を是とする。
たとえば、蛇口の設計において、温度の調整と水量の調整という2つの要求機能を満たす設計解を考える(干渉設計)。温水と冷水の量を調整するレバーを設けた場合、温度と水量は同時に調整される(2つの要求機能が互いに干渉する)。一方、水量比と全体水量を調整するレバーを設けた場合、温度と水量は独立に調整される(独立設計)。
もう1つの公理は「情報公理」と呼ばれ、情報量が最小の(成功確率が最も高い)設計を是とする。
情報量は、要求機能のばらつきの範囲と、それが設計の許容範囲を満たす範囲の比を用いて算出される。
公理的設計においては、独立公理に基づいて独立設計を満たす設計解を得るとともに、それらの設計解を情報公理に基づいて定量的に比較することにより、最良の設計解を導出する。
スーの設計プロセスに関する流れ図の中の設計者が設計解を生成している「案出と創造」部分に、TRIZの発想段階があてはまる。
一般の設計は「トレードオフ」のバランスを取ろうとするものであるが、TRIZは「トレードオフ」を除去するという考え方である。
コンセプトの有効性を評価する手段を提供している公理および必要機能の評価と各階層問題の取り扱い、という新しい観点を通して、「公理設計」はTRIZの問題定義と問題解決の段階の質を改善する可能性を提供している。
FA
(Failure Analysis)
不具合の原因究明と再発防止策の決定 1996年
アイディーション・インターナショナル社
アイディエーション・ジャパン(株)
製品や工程などの技術システムにおける不具合や他の問題の原因を明らかにし、不具合を是正する手段を検討する。
不具合分析専用のソフトウェアとしてFA(Failure Analysis)がある。
1.問題概要
2.システムに関する情報
  構造、環境、機能、既知の有害な作用
3.問題状況に関する情報
  経歴、絞り込み、増幅       
4.システムの図式化と仮説の立案
5.仮説の検証
6.不具合の図式化と不具合の是正
7.コンセプトのまとめ
8.結果の評価
既に起きている不具合の是正ができない理由は、不具合の発生メカニズムがわからないからである。
不具合の発生メカニズムがわかれば、不具合の発生の原因を排除する手段を考えればよい。
I-TRIZの不具合分析(FA)では、「いかにしたら不具合を起こすことができるか」と、通常とは逆の発想を行うことで、消極的になりがちな不具合対策に積極的な取り組みを可能にしている。
FP
(Failure Prediction)
潜在的不具合の解明と予防策の決定 1996年
アイディーション・インターナショナル社
アイディエーション・ジャパン(株)
既存のシステムを改善する新しい方策を導入した際に起こるかもしれない潜在的不具合を事前に予測し、発見した不具合の予防策を検討する。
不具合予測専用のソフトウェアとしてFP(Failure Prediction)がある。
1.状況の概要
2.システムに関する情報
  システムの構造、環境、機能
  既知の有害な作用
  システムの経歴       
3.不具合予測のための図式化
  システムの図式化、仮説の立案、シナリオ作成
4.仮説の検証
5.起こりうる不具合の是正
  不具合の図式化、不具合の是正のコンセプト
6.結果の評価
将来発生するかもしれない不具合の予防をするには、不具合の発生する可能性のあるケースを網羅的に予測できなければならない。
I-TRIZの不具合予測(FP)では、「いかにしたら不具合を起こすことができるか」と、通常とは逆の発想を行うことで、消極的になりがちな不具合対策に積極的な取り組みを可能にしている。
I-TRIZの不具合予測(FP)は、FMEAで予測した不具合の予防策を考えために使用できる。ただし、FMEAの書式を整えるものではないので、FMEAの代用はできない。
SSM(Stress Strength Model) 設計開発における不具合未然防止 1997年
田村泰彦
構造化知識研究所
トラブル情報に含まれているトラブル発生メカニズムを把握し、各機器やその一般的属性と、それにおいて発生する不具合事象、不具合事象要因、その不具合事象に対する対策内容などを、再利用可能な一まとまりの構造とした因果モジュールを整理し、その因果モジュールを因果連鎖の流れに沿って階層的に表現することで故障発生メカニズムの総体を表現する。
トラブル発生メカニズムを、因果モジュール(原因⇒結果の分節単位)に分け、各因果モジュールを、定義属性、不具合モード、ストレス要因、ストレングス要因、制御属性要因という5つの観点を用いて表現する。
1.対象のアセンブリやユニットの構成アイテムやその対象属性を把握する。
2.SSMの構造化知識ベースにおいて主に定義属性に対する検索を行い、設計アイテムやその対象属性に関係する知識を収集する。
3.構造化知識ベースの検索によって、過去に当該設計アイテムで起きた不具合の知識や、異なる設計アイテムの不具合であるが共通の対象属性を有しているため水平展開された知識などを、再発防止策・設計基準などと共に得る。
4.この結果を、再発防止チェックリスト帳票に落とし込み、チェックリスト管理を進める。
「SSM」は、構造化知識ベースの検索によって、具体的な再発防止策を決定することを目的としている。そのため、I-TRIZの「不具合分析(FA)」で再発防止案を出した後の具体化段階に使用できる。
「SSM」は、不具合分析のみで、FMEAのような不具合予測は考えていない。
リスクマネジメント 組織の価値創造の最大化 2006年(会社法の施行)
ISO31000
(Risk management - principles and guidelines)
リスクマネジメントは、経営者の責任において実施すべき経営管理業務(マネジメント)である。管理する対象は、起きてしまった事象や不祥事ではなく、これから影響を与える可能性のある「リスク」である。組織として考えるべきリスクは、組織自体や従業員に影響を与えるリスクと、組織が消費者や社会に対して与える可能性のあるリスクの両方で、どちらも管理しなければならない。
組織のリスク例
・社会的リスク(人事・組織、社会対応、法務)
・工学的リスク(製品安全、安全・環境、情報管理)
・経済的リスク(販売、金融・財務、物流、製品品質)
1.リスクマネジメント方針の表明
2.リスクの特定・リスク分析
帰納的手法:イベントツリー分析等(被害事象の発生確率を算定する)
演繹的手法:フォールトツリー分析等(頂上事象の発生確率を算定する)
3.リスク評価(発生確率と被害規模によって4つに分類)
4.リスクマネジメントの目標の特定
5.リスク対策の選択(低減、移転、保有、回避)
6.リスクマネジメントプログラムの策定
7.緊急時における対応手順の策定及び準備
8.リスクマネジメントのパフォーマンス評価
問題は現在の認識であるが、リスクは今後に起こり得る現象に対する認識であり、問題と同じく主観的期待と客観的事実のギャップがリスクである。リスクとは自らの目的(理想)が達成できない恐れのことである。
経営全般のリスクを回避するために使用できる定性的な手法としては、I-TRIZの「不具合予測、予防(FP)」が有効である。